「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から

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おすすめポイント

この本は、基本的には、被害者向けの本ですが、多くの場合、毒親は毒親の子なので、自分自身を理解するためにも、自分の親を理解するためにも、被害者向けの本を読むことは有用です。

本書では「毒親」と呼ばれる人たちを大きく4つに分類し、それぞれの特徴や背景を整理し、その上で、ではどう生きていけばいいのかという学びが得られます。

4分類とは「親が発達障害を持っている場合」「愛着スタイルに問題がある場合」「うつ病、トラウマなどの疾患や障害がある場合」に加えて「DVなど親も被害を受けている場合」です。

毒親、という言葉で捉えると見えてこない、より詳細な人間像を得ることができます。そこからわかるのは「毒親」が必ずしも悪意を持っているわけでは全くないこと。本人も苦しんでいる可能性があること。そして、そうであるとしても、被害者にとってはどれも「毒親」と呼ばざるを得ないほどの苦しみ、傷つき、痛みを与えるということです。

「変わりたい」と願う毒親がこの本を読むことには、ふたつの意義があるはずです。1つは、自分自身の子育てを顧みること、子どもに与えてしまった傷つきを理解すること。そしてもう1つは、ここに書かれていることが原因なのだとしたら、そこから変わっていくことが可能であると理解できることです。

例えば発達障害は、最近では発達特性と捉えられるようにもなっています。人にはそれぞれの特徴があり、その特徴自体が人を傷つけるわけではなく、その特徴を理解できていなかったり、そのためのケアができていないがために、人を傷つけてしまうということはよくあります。自分の発達特性を理解することは、人と幸せに生きていくために役に立ちます。

また、不安定な愛着スタイルや、うつやトラウマ、依存症など様々な「生きづらさ」は臨床的に様々な解決策が検討されていて、治療を受けることによっていきやすくなる可能性があります。生きやすくなることで、子どもに対してもケアを始めていけるようになることが十分にあり得ます。

置かれた環境が苦しみに満ちたものであると、子どもをケアするのは極めて困難です。典型的にはパートナーがDV加害者であるような場合、家庭は地獄であり、その中でケアをすることは難しいと言わざるを得ません。そのような関係を抜け出すことが、子どもにできるケアの最初の一歩になる可能性もあります(それは決して簡単な道ではありませんが、そう気づけた時に、社会にある様々な支援を受ける勇気が湧くかもしれません)。

このように、本書はただ「毒親ってこういう人だよね」という分類にとどまらず、毒親が持っているであろう「困りごと」「生きづらさ」に焦点を当てることで、変わりたいと願う毒親が読んだ際には、「ではこれからどうしていこうか」を考える重要なヒントがいくつも書かれています。

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「変わりたい」と願う毒親のためのコミュニティPaToCaの理論を学ぶにはこちらのページをご覧ください。