『子ども虐待を防ぐ養育者支援』

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おすすめポイント

本書は、自分の加害性に悩んでいる人が読む本としては硬い内容ですが、PaToCaの活動において重要な知見が含まれているため紹介いたします。

この本の特徴は、理系・文系の領域を横断し、さらに人間だけではなく哺乳類を主とした動物における子育てにまで視野を広げる学際性にあります。

例えば、42. 「哺乳類の「子育て意欲とそれに必要や神経機構」は、相当に堅牢で信頼できるものではあるが、しかしそれ以上ではない。極端なストレス環境下や子側の要因などによって、子育て意欲を失う場合がある。一方a、現代社会はあらゆる状況において、親(生物学的親ではなく、養育者)に子の養育責任を全うするように要請する。もちろんこれはすべての子どもに人権を認める現代社会の理念の根幹であり、重要なことである。しかし同時に、生物である親には、それが1人では成し遂げられない場合がある。ならば、現代社会は同時に、困難な状況に置かれた親たちを支援すべきではないだろうか。このことは親のためだけではなく、子がその親に強く愛着している場合には、子どもの最善の利益のためにも大切である。」

子どもを育てたいという思いは神経的な基盤もあり、本能的な部分もあるけれども、同時に、それだけでは済まないし、子育てができなくなる状況もよくあるということをはっきり述べています。「親なんだから、子どもは可愛くて当然」というわけでは決してないし、育てたいという気持ちが湧いてこない場面があることも自然なこと。その上で、困難な状況に置かれた人を支援する責任が社会にあるということです。

章ごとにわかりやすいまとめのイラストも載っています。例えば以下は47のサマリーです。幼少期の逆境体験がただちに虐待につながるのではなく、それに続く様々な生活困難との重複を防ぐこと、個人責任ではなく困難にさらされた親子を社会が守り支援するべき「システム」の問題としての理解が必要であることがわかります。

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養育者を孤立させないことの大切さ

さまざまな調査が紐解かれながら、本書が徹底的に指摘しているのは99.「経済的な困窮やひとり親などへの支援はもちろん必要であるが、それ以上に子どもの話をする相手や育児協力者がいるなど、養育者を孤立させない支援が必要である」ということです。

100. 「子ども虐待や養育困難の事例において、養育者の孤立の背景に、うまく助けを求めることができず、支援につながることが難しい現状が指摘されている」

122.「母親の健康と子どもの健康を守るために、母親の育児孤立の状況を解消することに政策の焦点が置かれるべきである。」

122.「主婦あるいは無職の母親は、うつ傾向がフルタイムで働く母親より高い。」

287. 「どの研究でも多変量解析によって貧困など他の重要要因の影響を考慮した上で、貧困と比較しても、孤立子育ての方が相対的により影響が大きいことが示唆された。」

なぜ孤立してしまうのか

孤立が、虐待に繋がってしまう最大の問題なのだとしたら、そもそも孤立してしまうのはなぜなのか。それを本書では以下のように指摘します。

288. 「孤立子育てが単独で存在するわけではなく、被虐待などの生育歴や、その他の生活困難要因と絡み合い、結果的に孤立子育てに陥っていることが多い。その最終結果としての子育てを支援するだけでは、生活全体の立て直しが難しいことはしばしば指摘されている。」

養育者支援とは、単に子育てそのものを支援するということではなくて、その人そのものを支援していくこと、その人の生活を支援していくことを含むということになります。

PaToCaでは、この全体を担うことはもちろんできません。しかし、毒親・加害者になってしまう親を、単にモンスターとして捉えるのでは決してなく、こうした全体像を理解した上で、自分と近い状況にある人たちとの繋がりや、愚痴をこぼしあったり、支え合ったりする場を、オンライン上で作っていきたいと思います。

「変わりたい」と願う毒親のためのコミュニティPaToCaの理論を学ぶにはこちらのページをご覧ください。